パンくん

6月22日(月) 晴れ

月曜日がやってくるとうんざりする。雨が降っていないだけまだましだ。美味しそうだと思ってえび餃子を買って帰ったらサイの口には合わなかったらしく全く食べなかったので私が全部食べた。たしかにあまり美味しくないかもしれない。

 

6月23日(火) 晴れ 暑い

仕事で数日前自分がやったことのミスが発覚し気分が下がる。誰にもあまり怒られなかったがそれがかえって落ち込ませた。とある資格のセミナーの講師が来るからお前も出ろ、と嫌いな上司に言われて渋々出た。去年出た同じ部署の人に「あの講師はおかしい」と事前に聞いていたが、いや、人は漏れなく皆おかしいと思って聞いてみたら開始5分で殺意が湧いた。人を小馬鹿にしたような威圧的な態度な上に、つまらない例え話の繰り返し。美味しいラーメン屋に行くために食べログで評価を調べるに決まってるだろ?とあたかも人類皆そうしているかのような口調で説いてくる。私はなるべく話を聞かないようにしていた。

昼休みにスーパーで買った香るエール6缶入が帰りのリュックでずっしり重かった。

 

6月24日(火) 晴れ 

明日は外で食べよう、サイと昨日から約束していたので回転寿司で夕食を食べて帰った。誰かが頼んだ海老天握りの海老天の一つが皿からシャリの上から落ちて横のレーンに転がったまま流れていて、深く考えたらそんなに可笑しいことでもないのに、その時は妙に可笑しいと感じてサイと二人で笑っていた。あれを頼んだ人は転がった海老天を見て笑っただろうか、落ち込んだだろうか。

帰宅後、急にサイが「志村けんってどんな人?パンくんって何?」と聞いてきた。保育園で誰かに聞いたのだろう。YouTubeで「志村けんのだいじょうぶだぁ!」と「志村動物園」の映像を探して観た。コントはいまいちわからなかったようだが、「志村動物園」を熱心に観ていた。サイは志村さんがコロナで亡くなったことを知っているので、観ていた途中で涙目になり「こんなにテレビに頑張って出てたのに死んじゃってかわいそう…」と消え入るような声で言った。サイが誰かの死に対してこういう態度になったのは初めてだった。「そうだね」と答えた。死はこの世界に生を受けた誰にでも漏れなく訪れるがそれがいつやって来るか大抵の場合は予測ができないから恐ろしく残酷だ。そんなことを最近ずっと考えている。

 

数日後、なぜ人は裸では外を歩かないかの話になった時に「洋服を着るのは人間だけだね」とサイに言ったら「でもパンくんは服着てるでしょ」と返されて確かにそうだと思った。